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論文名 後天性小児失語症における言語・認知面の問題とその評価
論文言語 J
著者名 進藤 美津子1), 衛藤 あや2), 市川 聖子3)
所属 1)上智大学
2)クマダ・クリニック
3)虎ノ門病院分院
発行 神経心理学:24(1),61─69,2008
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要旨 昨今,伝統的な臨床像に替わって,新たな視点で注目されている後天性小児失語症では,音声言語によるコミュニケーションが可能なレベルに回復しても,成人の失語症に類似した言語症状は残存しているため,漢字の習得,語彙や九九など新しい知識の学習に困難を示すことが多く,学年が進むにつれて学習困難が顕在化している.わが国には未だ小児失語症用の言語・認知検査は完成されていないため,私どもは次の2種類の評価の開発を試みた.構文能力の発達検査として,聴覚的理解課題と産生課題を作成し,健常児と失語症児に実施した結果,年齢と構文能力の発達の目安が得られ,失語症児の構文発達検査として使用できそうである.さらに漢字の音読検査を作成し,小学3年~6年次の健常児に実施した結果,学年が上がるにしたがって,漢字の読みは訓読みから音読みへと変化していくこと,失語症児は,同年齢の健常児と比べて正答率は低いが,健常児と同様に文字―音韻経路を主体として使用していることが推測された.しかし,健常児群と比べ,文字―音韻の変換能力が低いために,正答率も低かったことが認められた.
失語症児の教育・指導には脳損傷による言語機能障害に働きかけると共に,小児の発達的な視点を踏まえた長期的な取り組みが必要である.さらに失語症児のための適切な評価バッテリーの開発と,心理面・学習面のサポートを踏まえた指導法の工夫が重要である.
Keywords 後天性小児失語症の臨床像, 言語・認知面, 構文能力, 漢字の音読, 学習困難
別刷請求先 〒102-8554 東京都千代田区紀尾井町7-1 上智大学言語聴覚研究センター 進藤美津子


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