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論文名 視覚失認からみた純粋失読
論文言語 J
著者名 大槻 美佳
所属 北海道医療大学心理科学部
発行 神経心理学:24(2),136─145,2008
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要旨 純粋失読の症候と病巣,障害レベル,文字認知能力を自験例10名の純粋失読患者について検討した.1)Dejerineの報告した一文字も読めない純粋失読(Dejerine型)に共通する病巣は左紡錘状回,海馬傍回,逐次読み(letter-by-letter reading)を呈する純粋失読(LBLR型)に共通する病巣は紡錘状回であった.2)Dejerine型は字性のレベルで,LBLR型は語性のレベルで障害を認めた.3)LBLR型は,連続して文字を音読するより,文字音読と図形口述を交互に行ったほうが,音読能力が改善した.そのメカニズムは,複数視覚対象の認知の際の閾値上昇と推測され,他の機能を用いることで閾値の上昇が改善される可能性が示唆された.4)純粋失読患者は,音読できなくても文字の視覚的情報の照合や,意味理解へある程度アクセスできていた.5)純粋失読における書字障害は閉眼することで改善され,視覚入力が書字という出力に影響を与えている可能性が示唆された.6)純粋失読の障害メカニズムは,情報の離断という視点のみではなく,入力刺激が後続する認知処理系を変化させるような障害がありうることを示唆する.
Keywords 純粋失読, 遂字読み, 視覚失認
別刷請求先 〒002-8072 札幌市北区あいの里2-5 北海道医療大学心理科学部 大槻美佳 miotsuki@hoku-iryo-u.ac.jp


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