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論文名 アルツハイマー病とレビー小体を伴う痴呆(Dementia with Lewy bodies;DLB)におけるclosing-in現象:疾患別およびタイプ別の検討
論文言語 J
著者名 三瓶 麻衣1), 山崎 惠莉奈2), 佐藤 卓也3), 佐藤 厚3)4), 今村 徹1)4)5)
所属 1)新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科
2)富山労災病院リハビリテーション科
3)新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部言語聴覚科
4)新潟医療福祉大学大学院保健学専攻言語聴覚学分野
5)新潟リハビリテーション病院神経内科
発行 神経心理学:26(3),231─241,2010
受付 2009年5月29日
受理 2010年1月22日
要旨 アルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)患者316症例とレビー小体を伴う痴呆(Dementia with Lewy bodies;DLB)患者54症例を対象として,MMSEとAlzheimer's Disease Assessment Scale(ADAS)の構成課題,およびRey複雑図形の模写課題におけるclosing-in現象の有無を,接触・交差型,取込型の2タイプに分けて集計した.AD群とDLB群で,closing-in現象の各タイプの有無を従属変数とし,年齢,教育年数,罹病期間,数唱順唱,逆唱,MMSE得点,ADAS下位項目の再生,口頭命令,呼称,観念運動,見当識,再認のいずれかを独立変数とするlogistic回帰分析を行った.接触・交差型のclosing-in現象は,AD群,DLB群のいずれにおいても観念運動課題と関係する傾向が得られた.取込型のclosing-in現象は,AD群では罹病期間が短いほど,また呼称課題の成績が低いほど出現しやすく,DLBでは罹病期間が長いほど生じやすいという関係が得られた.ADASの観念運動課題は遂行機能障害を反映すると報告されている.接触・交差型のclosing-in現象は,遂行機能の障害によってモデルや枠線などと最終的な模写結果の関係を考慮して模写を始めたり修正したりすることができないために生じる可能性があると考えられた.一方,取込型のclosing-in現象には視覚認知障害が影響している可能性が考えられた.すなわちDLB群では,罹病期間が長くなるほど多くの症例で視覚認知障害が顕在化するために取込型が出現しやすくなると考えられた.AD群では,病初期から後方連合野損傷による視覚認知障害と言語障害を呈する一群が存在し,それらが初期から取込型のclosing-in現象を呈するために,罹病期間の短い群や,呼称課題の成績が低い群でより出現しやすくなると考えられた.
Keywords closing-in現象, アルツハイマー病, レビー小体を伴う痴呆, 視覚認知障害, 遂行機能障害
別刷請求先 〒950-3198 新潟市北区島見町1398 新潟医療福祉大学大学院保健学専攻言語聴覚学分野 今村 徹 imamura@nuhw.ac.jp


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