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論文名 アルツハイマー病における取込型closing-in現象の検討
論文言語 J
著者名 阿部 浩之1), 三瓶 麻衣2), 山崎 惠莉奈3), 佐藤 卓也4), 今村 徹1)5)6)
所属 1)新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科
2)太田綜合病院付属太田西ノ内病院リハビリテーション部言語療法科
3)富山労災病院リハビリテーション科
4)新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部言語聴覚科
5)同 神経内科
6)新潟医療福祉大学大学院保健学専攻言語聴覚学分野
発行 神経心理学:28(1),41─48,2012
受付 2010年6月22日
受理 2011年2月14日
要旨 アルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)患者連続348症例を対象として,MMSEとAlzheimer's Disease Assessment Scale(ADAS)の構成課題,およびRey複雑図形の模写課題において,取込型のclosing-in現象が見られた患者の診療録を回顧的に分析した.取込型は25症例であった.臨床的特徴から,取込型のclosing-in現象を呈するADが均一ではないことが示された.すなわち,(1)レビー小体を伴う認知症(Dementia with Lewy bodies;DLB)との関連が考えられるParkinsonism,幻視,認知機能変動,誤認妄想などの臨床的特徴を持つ群(DLB関連群)12例,(2)初診時から超皮質性感覚失語(transcortical sensory aphasia:TCSA)が見られる群(TCSA群)4例の2群が抽出された.DLB関連群は,12症例中8例が経過中にprobableまたはpossible DLBと診断されるに至っていた.また罹病期間が2年以内と短いことも特徴的であった.DLB関連群の多くは,実際には最初期のDLBであったと考えられた.取込型のclosing-in現象はDLBでADより高頻度に見られることがすでに報告されていることから,初診の時点で,DLBとしての認知機能障害が取込型のclosing-in現象を生じさせていたと考えられた.一方,TCSA群は発症年齢が59~71才と若いことが特徴的であった.発症年齢が低いADほど,言語障害が高頻度にみられ言語理解障害の程度が強く,視覚認知能力を要する課題において成績が有意に低いことが報告されている.また取込型のclosing-in現象は,視覚認知障害と関係しているのではないかとする説がある.TCSA群には初診の時点で視覚認知障害があり,取込型のclosing-in現象がみられた可能性がある.
Keywords closing-in現象, アルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD), レビー小体を伴う認知症(Dementia with Lewy bodies;DLB), 視覚認知障害
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