[第28巻第2号目次へ] Japanese/English

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論文名	物は「ごはん」，場所は「三重県（または四日市）」．―一般名詞と地名で別の常同的語性錯語を使用したジャルゴン失語の1例―
論文言語	J
著者名	鈴木　則夫1）, 松田　実2）, 長濱　康弘2）, 翁　朋子3）, 平川　圭子4）
所属	1）滋賀県立成人病センター老年内科言語室 2）同　老年内科 3）同　老年内科心理室 4）同　リハビリテーション科言語室
発行	神経心理学：28（2），160─168，2012
受付	2010年8月11日
受理	2011年7月25日
要旨	左側頭頭頂葉の梗塞により意味性jargon発話を呈した重度Wernicke失語の1例を報告する．症例は72歳，右利きの男性．聴覚言語理解は著明に障害され，物品の2者択一課題も不能であった．呼称や復唱課題への反応はほとんど新造語になった．本例は発症当初，典型的な新造語jargon発話を呈したが，発症から1年7カ月経過した頃から新造語が減少し，発症後2年9カ月頃から「ごはん」，「三重県」，「四日市」という無関連語性錯語が出現した．特徴的であったのは，会話において，一般名詞が「ごはん」に置き換わり，地名が「三重県」または「四日市」に置換するという現象であった．呼称課題で確認したところ，物品，家屋内の場所，建造物，人名は「ごはん」になったが，地図上の地名を呼称させると「三重県」あるいは「四日市」と応答した．本例は語想起において名詞の語彙が狭小化しているにもかかわらず，その数少ない語を表象すべき対象によって使い分ける能力を残した．
Keywords	ジャルゴン失語, 意味性ジャルゴン, 新造語ジャルゴン, 語想起
別刷請求先	〒524-8524　滋賀県守山市守山五丁目4番30号　滋賀県立成人病センター老年内科言語室　鈴木則夫 no-suzuki@iris.eonet.ne.jp