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論文名 |
ALSとその病理の広がり |
論文言語 |
J |
著者名 |
中野 今治 |
所属 |
自治医科大学内科学講座神経内科学部門 |
発行 |
神経心理学:28(3),191─198,2012 |
受付 |
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受理 |
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要旨 |
ALSは,中年以降に発症する進行性の運動ニューロン変性疾患であり,病理学的にはBunina小体とTDP-43封入体を有するほぼ均質な疾患である,というのが一般的に抱かれている考えである.しかし,その均質性は証明できておらず,近年の研究は多様性を示す方向にある.ALSの診断には症候の進行性が必要条件であるが,進行しない神経変性疾患は存在せず,変性という言葉の中にすでに進行性との概念が含まれている.従って,ALSは上位運動ニューロンと下位運動ニューロンが変性することのみで規定される,topographicalあるいはanatomicalな疾患概念であり,必然的に多様な疾患が包含される余地を有している.ALSの一部は特有の認知機能障害を呈し(ALS with dementia(ALSD)あるいはfrontotemporal lobar degeneration-motor neuron disease(FTLD-MND)),前頭側頭葉の変性萎縮と非運動性大脳皮質ニューロンにTDP-43陽性封入体を示す.ALSDではCA1-支脚移行部の限局性変性と側頭葉極内側部皮質表層の神経細胞脱落が観察される.その他に書字障害に関連してExner野の変性も指摘されている.近年,FUSタンパクの蓄積でもALSとFTLDを呈することが判明した.さらに,TDP-43遺伝子変異のみでなく,C9ORF72遺伝子変異例でもTDP-43封入体とBunina小体を有するALSとFTLDを示すことが判明し,ALSの多様性が改めて示された. |
Keywords |
筋萎縮性側索硬化症, 認知症を伴う筋萎縮性側索硬化症, 神経病理, 病変分布, 前頭側頭葉変性症 |
別刷請求先 |
〒329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-1 自治医科大学内科学講座神経内科学部門 中野今治
inakano@jichi.ac.jp |
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