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論文名 アルツハイマー病におけるMMSEの年次変化率―物忘れ外来における在宅療養患者の2~3年目年次変化率に影響を与える要因の検討―
論文言語 J
著者名 安達 侑夏1), 浅井 慈子2), 磯部 史佳3), 臼木 千惠4), 佐藤 卓也5), 今村 徹1)6)
所属 1)新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科
2)富山市民病院リハビリテーション科
3)済生会金沢病院リハビリテーション部
4)リハビリテーション中伊豆温泉病院リハビリテーション部
5)新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部言語聴覚科
6)同 神経内科
発行 神経心理学:28(4),240─247,2012
受付 2011年3月28日
受理 2011年9月16日
要旨 目的:アルツハイマー病(Alzheimer's Disease;AD)の認知機能障害について,初診1年後から3年後までの変化を追跡し,その変化に影響を与える可能性のある要因について検討する.対象:新潟リハビリテーション病院神経内科(物忘れ外来)を初診し,初診から1年後と3年後にもMMSEを再施行できたAD患者76症例.初診1年後の平均年齢79.6±5.9歳,初診1年後の平均MMSE得点20.7±3.5.方法:MMSEの2~3年目年次変化率を求め,(1)初診1年後のMMSE得点,(2)患者属性,疾患属性,精神症状,治療的介入,介護支援サービスの各項目のいずれかを独立変数とする重回帰分析で検討した.結果:2~3年目年次変化率とADASの口頭命令,見当識課題との間に有意な偏回帰係数が得られた.すなわち,口頭命令課題の減点が多いほど,また見当識課題の減点が多いほどMMSEの2~3年目年次変化率が有意に大きいことが示された.結論:言語症状を伴うAD患者では認知機能障害の進行速度が速いことが以前から報告されてきた.今回検討対象とした高齢のAD患者でも,言語理解障害を伴うと認知機能障害の進行速度は速くなる可能性が示唆された.また,ADの認知機能の進行は最初期や後期には進行速度が遅い一方で,中期に最も進行速度が速くなることが報告されている.見当識障害の出現がADの最初期から初期,さらに中期への移行を最も敏感に反映したために,ADASの見当識課題の成績とMMSEの2~3年目年次変化率との間に有意な関係が得られたのかもしれない.
Keywords 認知機能障害, 脱落バイアス, 年次変化率, 言語理解障害, 見当識障害
別刷請求先 〒950-3198 新潟市北区島見町1398番地 新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科 今村 徹 imamura@nuhw.ac.jp


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