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論文名 アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)とレビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies:DLB)における取込型closing-in現象:最初期のDLBとADの分離における感受性と特異性の検討
論文言語 J
著者名 中島 翔子1), 阿部 浩之2), 佐藤 卓也3), 佐藤 厚3), 今村 徹1)4)
所属 1)新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科
2)沼田脳神経外科循環器科病院言語聴覚科
3)新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部言語聴覚科
4)同 神経内科
発行 神経心理学:30(2),150─157,2014
受付 2013年10月25日
受理 2013年12月26日
要旨 アルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)とレビー小体型認知症(Dementia with Lewy bodies;DLB)連続543症例(AD 450,DLB 93)を対象として,構成課題における取込型closing-in現象の診断的有用性を検討した.DLBの診断にはpossible DLBの臨床診断基準(中核的臨床特徴である認知機能変動,幻視,Parkinsonismを1つ以上有する)を適用し,ADの臨床診断にはDLBの中核的臨床特徴を1つも有さないことを条件とした.対象患者の初診時に施行した構成課題における取込型closing-in現象によるDLBの検出について,以下の感受性と特異性を検討した:(1)初診時のDLB群とAD群における取込型closing-in現象によるDLB検出の感受性と特異性,(2)初診時にADと診断されたが2年間の経過観察中にpossible DLBの診断基準を満たした症例(2年後DLB群)と,初診時も2年後も診断がADであった症例(2年後AD群)における,初診時の取込型closing-in現象による2年後DLB検出の感受性と特異性.初診時に取込型closing-in現象を示したのはAD 450例中33例,DLB 93例中15例であった.その結果,ADとDLB全体を対象とすると,初診時の取込型closing-in現象によるDLB検出の感受性は16.1%(15/93),特異性は92.6%(417/450)であった.初診時AD群で2年間経過を観察した146症例のうち,2年後DLB群は19症例,2年後AD群は127症例であった.このうち,初診時に取込型closing-in現象を示していたのは2年後DLB群3症例,2年後AD群4症例であった.その結果,初診時ADを対象とすると,初診時の取込型closing-in現象による2年後DLB検出の感受性は15.7%(3/19),特異性は96.8%(123/127)であった.取込型closing-in現象はDLBの検出において一定の感受性と高い特異性を示し,その存在はDLBを疑う根拠になると考えられる.しかし感受性は16%前後,陽性検出率もADとDLB全体を対象とした場合31.3%(15/48)と十分ではなく,取込型closing-in現象が見られなくてもDLBは否定できないこと,および見られてもDLBではない可能性が小さくないことにも留意するべきである.また,取込型closing-in現象の感受性は,初診時のDLBでも2年後DLBでも約16%であり,ほぼ同等の値を示した.このことから,DLBにおける取込型closing-in現象の多くは,中核的臨床特徴である認知機能変動,幻視,Parkinsonismが出現する以前の最初期から存在していると考えられる.
Keywords closing-in現象, アルツハイマー病, レビー小体型認知症, 視覚認知障害, 臨床診断
別刷請求先 〒950-3198 新潟市北区島見町1398 新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科 今村 徹 imamura@nuhw.ac.jp


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