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論文名 高齢発症アルツハイマー病における発症年齢と被害妄想,誤認妄想との関係の検討
論文言語 J
著者名 加藤 梓1)3), 佐藤 卓也2), 佐藤 厚2), 今村 徹1)3)
所属 1)新潟医療福祉大学大学院保健学専攻言語聴覚学分野
2)新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部言語聴覚科
3)同 神経内科
発行 神経心理学:31(4),269─278,2015
受付 2014年3月31日
受理 2015年4月23日
要旨 [背景]アルツハイマー病(AD)における妄想の頻度は発症年齢が上がるとともに増加すると報告されているが,先行研究では,(1)発症年齢が量的要因か質的要因か,(2)発症年齢との関係が妄想の種類で異なるのかという点が明らかではなかった.[目的]高齢発症ADを対象として,発症年齢と被害妄想および誤認妄想との関係を,量的関係を前提とするlogistic重回帰モデルと質的関係を前提とする層別モデルで検討する.[対象]発症年齢65歳以上でNPI日本語版を実施したAD 354例.平均年齢80.4±6.0歳.[方法]NPIの妄想とその下位質問への回答から被害妄想と誤認妄想の有無をそれぞれ評定した.各妄想について,妄想の有無を従属変数,発症年齢を独立変数,あり群なし群間に有意差のあった項目を共変量とするlogistic重回帰分析を行った.また,対象患者を前期高齢発症(65~74歳),後期高齢発症(75~84歳),超高齢発症(85歳以上)に層別し,各妄想の頻度を比較した.[結果]被害妄想は88例,誤認妄想は62例で見られた.logistic重回帰分析では被害妄想のみで発症年齢に有意なオッズ比が得られた.層別分析では,被害妄想の頻度は年齢とともに有意に上昇していた(前期高齢発症17.7%,後期高齢発症27.7%,超高齢発症36.6%).誤認妄想の頻度は超高齢発症患者でのみ有意に高頻度であった(前期高齢発症16.2%,後期高齢発症14.7%,超高齢発症34.2%).[結論]高齢発症ADにおいても,被害妄想は発症年齢が量的に作用するというモデルにより合致しており,発症年齢の上昇とともに被害妄想の頻度も上昇していた.この結果は,ADにおいて,発症年齢が高いほど妄想を呈する患者で特徴的な局所脳糖代謝低下の分布パターンが生じやすくなるという報告と一致する.誤認妄想では発症年齢の影響が質的であるというモデルにより合致しており,超高齢発症群のみで誤認妄想が高頻度であった.この群の中に最初期のレビー小体型認知症や辺縁系神経原線維変化認知症が含まれており,それらが誤認妄想を呈しやすいのかもしれない.
Keywords アルツハイマー病, 発症年齢, 被害妄想, 誤認妄想, 高齢発症
別刷請求先 〒950-3198 新潟市北区島見町1398 新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科 加藤 梓 azusa-kato@nuhw.ac.jp


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