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論文名 |
動詞と考えられる無意味性再帰性発話を呈した1例 |
論文言語 |
J |
著者名 |
小松 慎太郎1), 大平 陽子2), 渡辺 真澄1)3), 今村 徹1) |
所属 |
1)新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科
2)住友別子病院リハビリテーション科
3)現 県立広島大学保健福祉学部コミュニケーション障害学科 |
発行 |
神経心理学:32(1),65─73,2016 |
受付 |
2015年1月6日 |
受理 |
2015年5月20日 |
要旨 |
無意味性再帰性発話が動詞として用いられていると考えられた失語症例を報告する.症例は56歳,男性,右利き.左中大脳動脈領域に広汎な陳旧性梗塞あり.発症24カ月時点で,聴理解は単語レベルから不良.発話はanarthria,喚語困難,音韻性錯語が目立った.再帰性発話は「いたいて」という4モーラの無意味語が中心で,「わかいて」「とないて」などと浮動するが,終末の3モーラのうちの1モーラ目の母音が[a],2,3モーラ目が「いて」で浮動しなかった.また,終末の3モーラに共通のアクセントが存在していた.再帰性発話の出現頻度が,自由会話場面では発話に加わる程度で目立たないが,より命題性の高い発話であるSLTAの説明課題場面で明らかに高かったことから,この再帰性発話は実在語再帰性発話で指摘される非命題的発話の性質を有していないと考えられた.また,(1)名詞の表出のみを求める課題であるSLTAの「呼称」ではまったく出現しない,(2)浮動しない第3,4モーラが動詞の活用語尾と一致する,(3)「ここいたいて」など代名詞の前置や終助詞の後置を伴う場合がある.(4)しばしば書字,描画,指差し動作を伴う形で動作や行為を説明しようとする際に出現する,といった特徴から,この再帰性発話は動詞として用いられていると考えられた. |
Keywords |
失語症, 無意味性再帰性発話, 実在語再帰性発話, 動詞, 非命題的発話 |
別刷請求先 |
〒950-3198 新潟市北区島見町1398番地 新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科 今村 徹
imamura@nuhw.ac.jp |
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