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論文名 言語の身体性と意味の再編成の過程
論文言語 J
著者名 今井 むつみ
所属 慶應義塾大学環境情報学部
発行 神経心理学:32(2),120─130,2016
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要旨 子どもはどのように単語の意味を学び,何万もの単語を含む語彙を構築しているのだろうか.子どもは,個々の単語の使える範囲を非常に少ない指示対象の事例から自分で推測して考えるしかない.形,重さ,大きさ,色,模様,触覚,性質,行動などのほぼ無制限の属性のうち,何がその単語の指示するところなのか,そして何がそこには関係しないか,ということは子どもが自分で推測するしかない.
もうひとつの問題はシステム構築の問題である.世界を言語によってどのように分節するかは言語によって異なる.つまり個々の単語の意味は,単語単体では決まらず,当該の言語の語彙の中で,当該の概念分野がいくつの単語によりどのように分節されるかを知らなければ個々の単語の意味を理解することはできないということになる.しかし,既存の語彙を持たない子どもは,新しいことばを学習する時,そのことばを取り巻く他のことばの存在を知りようがないのである.
本論文では幼児が最初にどのように記号としての単語の意味を身体に結びつけ,新しい単語の意味の範囲を推論するのか,また,どのように単語同士を関係づけ,語彙のネットワークのシステムを築いていっているのかという問題に迫る.
Keywords 語意表象, 語意の身体性, 語意の抽象性と恣意性, 語の記号接地
別刷請求先 〒252-0882 神奈川県藤沢市遠藤5322 慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス環境情報学部 今井むつみ imai@sfc.keio.ac.jp


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