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論文名 反応抑制障害がRey-Osterrieth Complex Figure模写の方略に影響する機序:アルツハイマー病を対象とした検討
論文言語 J
著者名 安達 侑夏1), 橋本 由美2), 川口 源水3), 佐藤 卓也4), 今村 徹1)5)
所属 1)新潟医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健学専攻言語聴覚学分野
2)デイサービスセンターはやどおり
3)初台リハビリテーション病院リハケア部
4)新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部言語聴覚科
5)同 神経内科
発行 神経心理学:33(2),126─134,2017
受付 2016年5月2日
受理 2016年9月12日
要旨 アルツハイマー病(AD)患者のRey複雑図形(ROCF)模写の順序を質的に分析し,不適切な方略と反応抑制障害との関係を検討した.対象はADAS,Frontal Assessment Battery(FAB),ROCF模写課題を施行し,ADAS構成課題で減点のないAD患者40例.ROCFに計20のまとまり(要素)を定義し,患者を以下の4群に分類した.A群:ROCFの輪郭の長方形(骨格要素A)から模写を開始してそれを完成させた26例.B群:骨格要素Aの一部から模写を開始したが,その完成前に他の要素の模写を開始して完成させた3例.C群:骨格要素A以外の要素から模写を開始して完成させた10例.D群:どの要素も完成させないまま模写を続けた1例.B+C群を方略として不適切なまとまりに引きずられた患者とみなし,A群との間で患者属性,疾患属性,認知機能属性を比較検討すると,B+C群ではA群よりもFABのGo-no go課題の成績が有意に低かった.構成障害の要因を統制したAD群において,計画的で合理的な順序でROCFを模写しなかった患者のほとんどは,不適切なまとまりに引きずられて模写を開始したC群と,適切なまとまりから模写を開始しても,それが完成しないうちに別のまとまりに引きずられたB群であり,反応抑制課題の成績が低下していた.反応抑制障害によって方略として不適切なまとまりが抑制されず,効率的な模写のための方略が低下するという仮説を支持された.
Keywords ROCF模写, 反応抑制障害, 方略, 遂行機能障害, 群化
別刷請求先 〒950-3198 新潟市北区島見町1398 新潟医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健学専攻言語聴覚学分野 今村 徹 imamura@nuhw.ac.jp


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