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論文名 書字の脳内機構:文字の運動変換―表出過程について
論文言語 J
著者名 毛束 真知子
所属 青山病院リハビリテーション
発行 神経心理学:19(1),22─29,2003
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要旨  書字障害例4例から書字の運動変換―表出過程の脳内機構を考察した.症例1:53歳の右利き女性.左頭頂間溝から左側脳室に至る術創によって右手と左手とで異なる書字障害を呈し,右手では文字形態の歪みや行の乱れが,左手では文字の線分方向の誤りや文字軸の回転などが出現した.症例2:57歳右利き男性.例3:54歳右利き男性.症例2,3は右頭頂葉優位の変性性疾患例で,着衣障害,構成障害などの右半球症状とともに両手の書字障害が発現した.両症例の失書症状は極めて類似しており,意図する方向に運筆できず,文字形態を思うように形作れないのが特徴であった.症例4:77歳右利き女性.左中前頭回後部~中心前回前部にかけての脳梗塞後に右一側性の書字障害を呈し,右手のみに文字形態の歪みが認められた.これらの症例の検討から,文字形態が想起された後,左頭頂間溝で文字の視覚的イメージが運動情報に変換され,このような文字の運動パターンの実現に右頭頂葉も深く関与していることが想定される.この運動情報は左中前頭回後部で言語情報と連合され,その後に運動経路が一側性に分岐し,運動前野,手指の第一次運動野を介し,文字の表出に至ると考えられる.
Keywords 書字の脳内機構, 失書, 左頭頂間溝, 左中前頭回, 右大脳半球
別刷請求先 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-53-3 青山病院リハビリテーション 毛束真知子


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