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論文名 感情認知の脳内機構:各種脳病変における検討
論文言語 J
著者名 菅 弥生1), 河村 満2)
所属 1)東京大学大学院総合文化研究科生命環境科学系認知行動科学
2)昭和大学医学部神経内科
発行 神経心理学:19(3),172─178,2003
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要旨  他者の感情を認知する能力はコミュニケーションや社会行動を行うために重要である.我々は,パーキンソン病,扁桃体病変,うつ病という異なった脳病変を有する患者群における感情認知能力を検討し,感情認知に関わる脳内機構について考察した.感情の種類は基本表情とされる6種類(幸福,悲しみ,怒り,恐怖,驚き,嫌悪)で,刺激の種類は,従来の研究で用いられている静止画表情の他,より自然な表情に近い動画表情および感情のこもった音声,感情的な内容を表す文章を用いた.結果として,パーキンソン病群16名では,動画表情の恐怖・嫌悪感情の正答率が健常高齢者よりも有意に低下し,音声,文章からの感情認知は正確であった.扁桃体病変例1例では,音声および文章からの感情認知における恐怖感情の正答率低下がみられ.動画表情の認知は正確であった.うつ病群16名では,音声からの感情認知において,驚きを表す音声をよりネガティブな感情であると判断したが,動画表情,文章からの感情認知は正確であった.このように,感情認知障害には脳病変により様々なパターンがあり,感情はそのカテゴリーおよびモダリティーごとに異なる脳部位によって処理されていることが示唆された.
Keywords 感情認知, パーキンソン病, 扁桃体, うつ病
別刷請求先 〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8 河村 満


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