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論文名 言語表出のダイナミズム
論文言語 J
著者名 大槻 美佳1), 相馬 芳明2), 成冨 博章3)
所属 1)北海道医療大学心理科学部
2)相馬神経内科クリニック
3)国立循環器病センター内科脳血管部門
発行 神経心理学:19(2),64─74,2003
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要旨  1)視覚刺激によって呼称する視覚性呼称(物品呼称)と,外的な刺激なしに単語を想起する語列挙の障害が病巣によって解離する事,すなわち左前頭葉内側面損傷群では語列挙のみが障害され,左前頭葉背外側面損傷群では視覚性呼称も語列挙も障害される事を示した.2)語列挙の中でも,語頭音による語列挙とカテゴリーによる語列挙も解離し,前者は左側頭葉から頭頂葉を経て前頭葉に至る部位が,後者は左側頭葉から頭頂葉は経ずに前頭葉に至る部位が関与している事を病巣研究とfMRIの方法で明らかにした.3)脳損傷患者において,語列挙課題のPET賦活試験の経過を検討した(発症1カ月後と6カ月後).左前頭葉損傷群では,左前頭葉に損傷があるにもかかわらず左前頭葉の賦活がみられ,特に回復が良好であった例ではブローカ野の賦活が顕著であった.一方,後方領域(頭頂葉,後頭葉)損傷群では左前頭葉の賦活はみられず,回復が良好だった症例のみ6カ月後に左前頭葉の賦活がみられた.この事より損傷脳の回復に重要な代償部位は,病巣によって,また回復時期によって異なる可能性が示唆された.
Keywords 視覚性呼称, 語列挙, 失語の回復, PET, fMRI
別刷請求先 〒565-8565 大阪府吹田市藤白台5-7-1 国立循環器病センター内科脳血管部門 大槻 美佳


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