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論文名 視床と情動
論文言語 J
著者名 平山 和美
所属 東北大学大学院医学系研究科障害科学専攻高次機能障害学
発行 神経心理学:17(2),99─103,2001
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要旨 情動システムの中核とされる回路は,視床背内側核─前部帯状回前頭葉眼窩皮質─側頭極─扁桃体─視床背内側核という,基底外側辺縁回路であり,視床下部はこの系と前部帯状回前頭葉眼窩皮質─視床下部─扁桃体という双方向性の連結によりつながっている.傍正中視床中脳梗塞はこの2つの回路それぞれの構成要素である視床背内側核,視床下部を同時に損傷し,特異な情動の変化を生じ得る.この部位の梗塞で,幼児化と多幸をきたした2例を報告した.意志が強く,良き母であった主婦は,いたずら好きの少女のように人が変わり,行動や口調も子供っぽく,Ganser症候群様の当意即答がみられた.生真面目で,気難しい老年男性は,陽気に童謡を歌ったり,汽車ポッポごっこをするようになった.後者は知能,記憶など正常であり,これらの障害による二次的なものでないことが確かめられた.背内側核の病巣が前頭葉眼窩皮質への投射を遮断したことにより多幸などの変化を生じ,視床下部の病巣が怒りや不安の回路の機能を弱め,喜びの機能を温存,背内側核の病巣で生じる情動から陰性の部分を抜き取って特異な変化を生じた可能性を論じた.
Keywords 傍正中視床中脳梗塞, 背内側核, 視床下部, 情動, 幼児的言動
別刷請求先 〒980-8575 宮城県仙台市青葉区星陵町2-1 東北大学医学部高次機能障害学 平山和美


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