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論文名 前頭葉と情動─特に眼窩脳の機能について
論文言語 J
著者名 加藤 元一郎
所属 東京歯科大学市川総合病院精神神経科
発行 神経心理学:17(2),110─120,2001
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要旨 ヒトの前頭前野は,大きく2つの領域,すなわち,背外側部(BA 8,9,46)と眼窩部(BA 10,11,12)とに分けられる.眼窩領域の下内側部が,前頭葉腹内側部(BA 11が中心)と言われる.前頭前野背外側部に関しては,心的セットの形成・変換,流暢性,記憶の組織化などの機能が明らかにされており,またワーキングメモリや反応の選択機能などと深い関連を持っていることが示されている.眼窩部の機能に関しては,現在の所3つの見解がある.すなわち,ソマティック・マーカー仮説,刺激や反応の報酬価の評価に関する見解,心の理論に関連した説明である.これらの仮説は,いずれも行為の選択や意思決定に関与する情動,すなわち行動を制御する情動的な信号と強い関連をもっている.本稿では,ソマティック・マーカー仮説を紹介した.ソマティック・マーカーは,我々の意思決定を援助する重み付け信号(情動反応・自律神経系反応)であり,前頭葉腹内側部は,このマーカーと外部環境の認知とを結びつける記憶装置であるとされる.この仮説を実証する検査として,ギャンブリング課題が考案されている.この検査による自験例での検討では,重篤な社会的な行動障害をもつ前頭葉眼窩部損傷例において成績の異常が検出された.
Keywords 前頭前野, 眼窩脳, 情動, ソマティック・マーカー仮説
別刷請求先 〒272-8513 市川市菅野5-11-13 東京歯科大学市川総合病院精神神経科 加藤元一郎


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