[第17巻第2号目次へ] Japanese/English

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論文名	重度の健忘が持続する単純ヘルペス脳炎の一例─MRI体積計測・神経心理学的検討─
論文言語	J
著者名	稲葉　良子1）, 米田　行宏2）, 田渕　正康2）, 森　悦朗3）
所属	1）兵庫県立姫路循環器病センター神経心理室 2）同　神経内科 3）兵庫県立高齢者脳機能研究センター臨床研究科
発行	神経心理学：17（2），147─155，2001
受付	2000年5月29日
受理	2000年12月18日
要旨	単純ヘルペス脳炎の1例を5年間にわたり神経心理学的・神経放射線学的に検討した．症例は40歳（発症時35歳）男性．急性期に抗ウイルス薬アシクロビルの治療を受けた．神経心理検査では知的機能低下，重度の言語性・非言語性の前向性記憶障害，10～15年に及ぶ逆向性健忘が発症5年後まで持続していた．脳MRIでは両側（右側優位）の側頭葉内側部から前頭葉底部に及ぶ広範な病巣が認められた．脳MRIを用いた側頭葉構造体の体積計測では，側頭葉内側部（海馬・海馬傍回・扁桃体）の体積は発症1年後は健常者の9％，5年後には5％，側頭葉外側部の体積はそれぞれ健常者の42％，31％だった．本例の持続する重度の健忘は，側頭葉内側部の高度萎縮と前頭葉底部に広がる病巣が関与していると考えた．また，単純ヘルペス脳炎後に生じた側頭葉内側部を中心とした脳萎縮は，慢性期に緩徐に進むことを定量的に評価した．
Keywords	脳炎, 単純ヘルペス脳炎, 記憶, 健忘, MRI
別刷請求先	〒670-0981　姫路市西庄甲520　兵庫県立姫路循環器病センター神経心理室　稲葉良子