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論文名 |
日本語における失行性失書での書取・写字の成績差について |
論文言語 |
J |
著者名 |
井手 あかね, 大東 祥孝 |
所属 |
京都大学人間・環境学研究科 |
発行 |
神経心理学:22(2),119─129,2006 |
受付 |
2003年1月14日 |
受理 |
2005年7月15日 |
要旨 |
欧米では失行性失書の機序を,書字の運動要因の障害とする先行研究が多い.その場合,視空間要因の障害はないので,視空間機能により文字を図的に模写することで写字では改善するのが特徴とされる.しかし実際には,多くの症例で視空間的な障害も合併しており,二次的であれ視空間要因が失書症状になんらかの影響を及ぼしていると考えられる.これまで書取と写字で充分な数の同じ刺激を用いた量的・質的な比較研究はない.今回,緩徐進行性に失行性失書と視空間障害を含む多彩な頭頂葉症状を示し,MRIで頭頂葉中心に萎縮がみとめられる患者YMを対象に,その失書症状について,形態的な書字エラーに対応する新たな基準による分析を試みた.書取と写字で文字種別にエラーパタンと正答率についてχ2検定を行った.エラーパタンは漢字・平仮名ともに,書取―写字間で有意に異なった.写字により成績は改善傾向にあったが,有意に改善したのは漢字のみであった.日本語における失行性失書では,写字による改善は文字種により差が出る場合があることがわかった.YMの写字では,見本字を模写する行為が書取と異なる字形の歪みを誘発しており,通常とは異なる写字経路の使用が示唆された.視空間障害を伴う失行性失書では,見本字が書字運動障害を補う視覚的cueとなる一方,書取と異なるエラーを誘発する視覚的妨害にもなると推測される. |
Keywords |
失行性失書, 視空間障害, 書字の運動要因, 頭頂葉 |
別刷請求先 |
〒606-8501 京都市左京区吉田本町 京都大学国際交流センター内大東研究室 井手あかね |
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