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論文名 物品使用における把持過程の分析―両側頭頂葉萎縮例における検討―
論文言語 J
著者名 小早川 睦貴, 大東 祥孝
所属 京都大学大学院人間・環境学研究科
発行 神経心理学:23(3),200─208,2007
受付 2006年10月11日
受理 2006年12月8日
要旨 物品の実使用における重要な特徴として,行為対象を適切に把持する必要性が挙げられる.本研究では変性疾患の1例について,対象の把持過程に着目した分析を行った.本症例では,両側頭頂葉(右優位)の萎縮と血流低下がみられ,物品の実使用において動作の拙劣さ,空間的エラーの他,物品の把持困難により使用動作が停止するという現象がみられた.この症例に日常物品を提示し,使用する際の持ち方で対象を把持するよう求めた.物品の把持部分が反応手と同じ側に置かれた場合(同側条件)と,異なる側に置かれた場合(反対側条件)とで右手の反応を比較したところ,反対側条件で物品の把持が有意に困難だった.また,物品の把持時と非把持時とで動作を比較すると,物品の把持時において,動作がより適切に表出された.物品使用の困難については複数の要因が関与することが報告されているが,本症例では物品を把持する段階において,使用手と行為対象の視空間的な運動処理が困難であり,それによる把持困難が物品使用障害に影響することが示唆された.
Keywords 把持, 物品使用, 頭頂葉, 視空間情報
別刷請求先 〒142-8666 東京都品川区旗の台1-5-8 昭和大学医学部神経内科 小早川睦貴 kobayakawa@med.showa-u.ac.jp


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