学会誌

書誌情報

Full Text of this Article
in Japanese PDF (487K)
論文名 アルツハイマー病におけるMMSEの年次変化率―物忘れ外来における在宅療養患者の1年目年次変化率と2年目年次変化率の比較―
論文言語 J
著者名 磯部 史佳1), 臼木 千惠1), 佐藤 卓也2), 佐藤 厚2), 今村 徹1)3)
所属 1)新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科
2)新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部言語聴覚科
3)同 神経内科
発行 神経心理学:23(3),220─229,2007
受付 2006年12月20日
受理 2007年7月3日
要旨 アルツハイマー病(Alzheimer's disease;AD)の認知機能障害の経時的な変化を検討するために,物忘れ外来を初診した患者を対象として以下の検討を行った.まず,初診時のMMSEが10点以上で,1年後にMMSEを施行した在宅療養中のAD患者62症例のうち2年後にもMMSEを施行できた49症例と施設入所などで2年後のMMSEを施行できなかった13症例を比較検討した.その結果,MMSEを施行できなかった症例では,初診1年時MMSE得点が有意に低く,ADAS減点が有意に大きく,初診から1年後までのMMSEの年次変化率が有意に大きかった.次に2年後にもMMSEを施行した49症例について初診から1年後までのMMSE年次変化率と1年後から2年後までのMMSE年次変化率を比較検討した.対象患者の初診1年時の平均年齢は80.1±6.6歳,初診1年後のMMSE得点は19.4±4.2(11~29)であった.1年目のMMSE年次変化率は0.1±2.3(-3.9~4.9),2年目年次変化率は-1.8±2.6(-6.0~3.8)で,両者に有意差が見られた.初診時に全例に系統的に行われた家族指導が,患者の療養環境を改善して生活上の活動性を高め,家族指導前に合併していた廃用性の心身の機能低下を改善することによって,1年目のMMSE年次変化率を小さくする方向に影響を与えた可能性が示唆された.また,初診1年後以降の脱落は進行の速い患者に偏っていた.すなわち本研究の結果は,対象患者が高齢であるという要因に加えて,1年目のMMSE年次変化率は家族指導と療養環境の向上に由来する認知機能障害の改善に影響されており,2年目の年次変化率は進行の速い患者が脱落したことに影響されていると考えられた.
Keywords アルツハイマー病(AD), MMSE, 家族指導, 臨床経過
別刷請求先 〒950-3198 新潟市島見町1398番地 新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科 今村 徹 imamura@nuhw.ac.jp


Copyright © 2002 日本神経心理学会 All rights reserved
http://www.neuropsychology.gr.jp/