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論文名 上側頭回損傷例および扁桃体損傷例の社会的認知障害
論文言語 J
著者名 秋山 知子1), 加藤 元一郎2), 村松 太郎2), 斎藤 文恵2), 仲地 良子1), 鹿島 晴雄2)
所属 1)駒木野病院精神科
2)慶應義塾大学医学部精神・神経科
発行 神経心理学:23(4),260─267,2007
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要旨 社会的認知を担う脳領域に上側頭溝領域や扁桃体が挙げられることが多い.我々は右上側頭回損傷例および片側扁桃体損傷例における社会的認知を検討したため,本稿で紹介する.まず上側頭回損傷例では視線方向判断障害,「他者の視線方向に沿って自らの注意を誘導する」という機能の障害,および表情認知障害を認めた.その一方で熟知相貌同定や相貌学習には障害が目立たなかった.すなわち,上側頭溝領域では顔の可変的要素(表情,視線方向)を特異的に処理しているとする顔認知モデルを本例は支持していると考えられる.また扁桃体損傷例では,上側頭回損傷例と同様に「他者の視線方向に沿って自らの注意を誘導する」機能に障害を認めた.一方でどちらの損傷例も,非生物的信号である矢印方向に沿っては注意を正常に誘導することができた.したがって上側頭溝領域や扁桃体は視線など生物的信号を処理することに特化しているらしいと推測される.このように生物的信号を処理する脳領域が互いに協調しながら社会的認知を担っているものと考えられる.
Keywords 扁桃体, 顔認知, 視線認知, 社会的認知, 上側頭溝
別刷請求先 〒193-8505 八王子市裏高尾町273 駒木野病院精神科 秋山知子 tee-i@mxv.mesh.ne.jp


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