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論文名 アルツハイマー病における認知機能障害の年次変化―ADAS下位項目の1年目年次変化率と2年目年次変化率の比較検討―
論文言語 J
著者名 百瀬 将晃1), 磯部 史佳2), 臼木 千惠1), 佐藤 厚3), 今村 徹1)4)
所属 1)新潟医療福祉大学医療技術学部言語聴覚学科
2)済生会金沢病院リハビリテーション部
3)新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部言語聴覚科
4)同 神経内科
発行 神経心理学:25(3),237─243,2009
受付 2009年1月5日
受理 2009年4月13日
要旨 アルツハイマー病(Alzheimer's Disease;AD)の個別の認知機能障害の経時的な変化を検討するために,新潟リハビリテーション病院物忘れ外来を初診した患者を対象として以下の検討を行った.初診時のMMSE得点が10点以上で,初診2年後までMMSE,ADASを施行できた在宅療養中のAD患者56症例を対象としてMMSE得点,ADAS減点,およびADASの下位項目の減点の1年目,2年目の年次変化率を比較した.1年目年次変化率と2年目年次変化率はMMSE得点で0.0±2.2と-1.6±2.4,ADAS合計減点で0.3±4.4と3.1±4.7であり,両者ともに1年目年次変化率は2年目年次変化率に比べて有意に小さかった.ADASの下位項目の検討では,観念運動課題の失点で1年目年次変化率が-0.6±1.6,2年目年次変化率が0.8±1.4であり,1年目年次変化率は2年目年次変化率に比べて有意に小さかった.先行研究では,1年目年次変化率が2年目の年次変化率に比べて小さくなった要因について,初診時に行われた家族指導が,患者の療養環境を改善し家族指導前に合併していた廃用性の認知機能低下の改善をもたらしたと考察されている.本研究の結果から,この廃用性の機能低下とその改善という現象は,特に観念運動課題に現れやすいと考えられた.ADASの観念運動課題は遂行機能を反映するとされている.従ってAD患者の多くでは,初診の時点で廃用性の機能低下による遂行機能障害の増悪を合併しており,それが療養環境の改善と生活上の活動性の向上によって初診以降に改善した可能性がある.すなわち,遂行機能障害は非薬物的介入の効果が表れやすい認知機能である可能性がある.
Keywords アルツハイマー病, ADAS, MMSE, 年次変化率, 遂行機能
別刷請求先 〒950-3198 新潟市北区島見町1398番地 新潟医療福祉大学大学院保健学専攻言語聴覚学分野 今村 徹 imamura@nuhw.ac.jp


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